豪遊

 先日、駅のそば屋へ行きました。
午前11時過ぎの店内は、まだそんなに込み合ってはいませんでした。
朝食が遅かった私は、実はお腹はすいていませんでした。
それでもたぬきそばを注文します。
二つ離れたテーブルに、おそらく二十歳過ぎぐらいでしょうか、1人の女性が座りました。
彼女はカレーライスと蕎麦を運んで来ました。
ミニカレーセットとか言うのではありません。
カレーライスと蕎麦です。
私は水のおかわりをしようと立ち上がり、帰りに見るともなしに彼女のテーブルに目をやりました。
蕎麦にはかき揚げと生卵、カレーにはコロッケまで載っています。
豪勢です。というか豪快です。
小柄な彼女はそれらを黙々と食べていました。
私はある少年のことを思い出しました。
もう何年も前の話です。
ある立ち食いそば屋にその少年はいました。
少年の前にはカツカレー、牛丼、大盛りざるそばが並んでいました。蕎麦にはかき揚げ、エビ、茄子など数種類の天ぷらが載っています。
少年はそれらを順番に食べていきました。
高校生の少年のその食事風景は、私の目にはまさに豪遊に見えました。
食べ盛りの少年の夢がそこにあると思っていました。
相変わらず彼女は食べ続けています。
カレー カレー カレー ソバ ソバ カレー カレー ソバ ソバ
結構ないきおいで食べています。
むしろ尋常ではないぐらいにも見えます。
よほどお腹がすいているのでしょうか?
それとも何か嫌なことでもあったのでしょうか?
何が彼と彼女をそうさせたのか、本当のところは誰にも解りません。
私はそば屋を出るとその足でパン屋にいき、カレーパンとクリームパンを買いました。

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