地震以降

 久しぶりに稽古に行きました。

というより、久しぶりに家を出ました。

ICカードのチャージに手間取ったり、電車に傘を置き忘れたり、停電に行く手を阻まれたりとすっかり外界に不慣れになってしまった私でした。

それでもぎこちなく動き回りながら何とか稽古場につきました。

すでに家を出てから4時間以上経っていました。

稽古場の近くの喫茶店で書き物をしようと、少し早めに家を出ました。

駅を出るとそこは停電していました。

店はやっていません。食事もできません。

しかたなく私は2駅移動しました。

降りたことのない駅です。ちょっとした探検気分です。

しかしなかなか店は見つかりません。

やっと見つけた喫茶店は満席で入れませんでした。

少し早いけど稽古場に行ってしまおうと思い、私は電車に乗りました。

すると停電が終わるまで施設に入ることはできないというではないですか。

予定ではあと2時間停電は続きます。

今度は4駅移動してみました。

私はその駅の構内に喫茶店があるのを知っていたのです。

壁際の席でノートを開きます。

テーブルに置いた資料をとろうと伸ばした右手にはボールペンが握られたままでした。

ボールペンが壁に触れ、サッと線を引いてしまいました。

「あっ」と思い壁を見ると、そこには同じような線が沢山付いています。

同じことをしている人がこんなにいるのか、と思いちょっと嬉しくなりました。

私の線の横に日付を入れたいと思いましたがやめておきました。

ふと気がつくとなんだか揺れているように感じました。
地震酔いかなと思いましたが、見ると照明器具がかすかに揺れています。
遠くでゴーッという音も聞こえます。
私はここが駅の構内であることを思い出しました。
電車が通るたびに揺れています。
地震がなかったらこんなことには気がつかなかったかもしれません。
結局稽古は1時間ちょっとしか出来ませんでした。
それでも気分は悪くありません。
今日はいろいろなことがありました。
中でも最大の出来事は行きの電車の中でした。
突然携帯電話が鳴り出しました。
緊急地震速報です。
乗客全員の携帯が一斉に鳴り出します。
みんな一斉に携帯を取り出しました。
中には着信していない人もいたようですが、それでも携帯を確認します。
どうやら地震は遠いようです。
ひょっとしたらここも揺れているのかもしれませんが、電車も揺れているのでわかりません。
みんなホッとして緊張が緩んだのか笑顔です。
これも地震が生んだ一体感でしょうか。
私はとても面白くて嬉しくてわくわくしました。
こういうのを流行りの言葉で言うと不謹慎というのでしょう。
今日はとてもドラマティックな1日でした。
久しぶりに家を出ました。
世界は刺激と感動に溢れていると感じました。
おじさんのボールペンも拾ってあげたし。


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